2025.12.25
人・動物・環境をつなぐ市政とは
~ 佐賀市議会で考える「ワンヘルス」~
令和7年12月8日に開かれた佐賀市議会の一般質問で、御厨洋行議員が「ワンヘルス」をテーマに、人の健康、動物の健康、そして私たちを取り巻く環境お一体のものとして捉え、市政運営にどのように生かしていくべきかを質問されました。
近年、新型コロナウイルス感染症の流行をはじめ、鳥インフルエンザなどの人と動物の間で広がる感染症、さらには地球温暖化や森林の減少、野生動物の出没といった環境問題が、日常生活に大きな影響を与えています。
このことを踏まえ御厨議員は、こうした問題はそれぞれが別々に起きるのではなく、人・動物・環境が複雑につながり合う中で生じていると指摘し、『「ワンヘルス」とは、人の健康、動物の健康、環境の健全性は互いに深く関わっており、どれか一つだけを守るのではなく、全体を一体的に守ることが大切だという考え方です。世界保健機関(WHO)などの国際機関でも推進されており、日本でも国や自治体が連携して取り組みを進めています。この理念を佐賀市の市政にも取り入れ、分野の垣根を越えた取り組みを進める必要性がある』と訴えました。
質問の中では、具体的な事例も多く紹介され、例えば、人と動物の感染症対策では、医師会と獣医師会が連携することで、感染症の早期発見や拡大防止につながることが期待されることや災害時にはペットも家族の一員として同行避難が求められることから、ペット避難所の整備や、安心して避難できる環境づくりが重要であること等が取り上げられました。さらに、森林や里山の保全によって野生動物との不要な接触を減らすことが、結果として人の安全や健康を守ることにつながる点も強調されました。
これに対し坂井市長は、「ワンヘルスの考え方について理解を示し、市としても特に感染症対策の分野において、すでに分野横断的な視点での検討を進めている」と答弁されました。また、今後、新たな人獣共通感染症が発生する可能性を踏まえ、人だけでなく動物や環境にも目を向けた取り組みが必要であり、関係部署が連携しながら対応していくとの考えを示しました。
また、市の担当部局からは、狂犬病予防注射や各種ワクチン接種の実施や鳥インフルエンザなどが発生した際の県との連携体制、災害時におけるペット避難所の拡充検討など、現在行われている具体的な施策について説明があり、動物愛護の分野では、譲渡の推進やイベントを通じて、人と動物が共に暮らす社会づくりを進めていることも紹介されました。
今回の一般質問を通じて、ワンヘルスは決して専門家だけの課題ではなく、日頃の感染症予防、ペットとの暮らし、自然環境を大切にする行動など、私たち一人ひとりお生活と深く結びついていることが執行部や他の議員にも伝わったと思います。