ワンヘルスとは

ワンヘルスの6つの柱

ワンヘルスは、6つ⽅針からさまざまな課題に
対する取り組みを⾏っています。

1 人と動物の共通感染症対策

福岡県では医療と獣医療が連携発生予防、まん延防止を

現在、⼈に感染する病原体は1,400種以上あり、その中には、今回の新型コロナウイルス感染症や、以前⼤きな社会問題にもなりました⽜海綿状脳症(BSE)、⿃インフルエンザ、エボラ出⾎熱をはじめ⼈と動物の共通感染症が多数あります。
感染を阻⽌するためには、1感染源、2感染経路、3宿主の3つに対するそれぞれの対策が必要であることから、⼈、動物、環境それぞれのアプローチによって⼈や動物の感染を防ぐことが喫緊の課題となっています。

2 薬剤耐性菌対策

2016年から拡大防止のため、普及啓発などのアクションを

現在、抗生物質などの抗菌性薬剤に効果が見られなくなった薬剤耐性菌は、増加の一途をたどっています。結核やマラリアが代表的です。この問題は、人類による抗菌性薬剤を過剰に使用するなどの過去の行為が今日の問題と結びついています。その結果、薬剤耐性菌や薬剤耐性性マラリアなどの治療は大変困難であるとともに、国境を越えて増加しています。この現状から、すぐにでも薬剤使用について、世界的な協力による適正使用が必要な段階です。
そこで、WHO(世界保健機関)は2015年に世界中で、薬剤耐性菌対策を取り組む決議を採択してきました。国連総会G7サミット(先進国首脳会議)でも、薬剤耐性菌対策の重要性を訴えています。

3 環境保護

良い環境と多様な生物のすみ分けを保つことが大切

近年のグローバル化や大量の食糧生産は、人類や動物にとって貴重な森林の過剰伐採をはじめ、生態系を破壊し、気候変動の一因となっています。地球の温暖化は熱中症のリスクを高めるだけでなく、豪雨や台風、山火事といった様々な災害の原因となり、人だけでなく動植物にも大きな災いをもたらしています。このように環境と人と動物の健康は密接に繋がっています。
また大規模な森林伐採や急速な都市化は、それまで森林の奥地に生息していたウイルスなどの病原体と人間が遭遇する機会となり、新しい感染症が発生する恐れがあります。つまり「ジャングルの奥地に密かに生息している微生物と人間が接してはいけない」が大事です。自然環境は、人間も含め多様な生物が生きる場です。いい環境と生物の棲み分けが保たれていてこそ、人や動物の健康が維持されます。また、健康にとって大事な環境を次の世代に引き継ぐことも忘れてはいけません。

4 人と動物との共生社会づくり

愛玩動物とのより良い関係を、定期検診などの衛生管理も

少子化高齢社会の中で、愛玩動物が家族の一員として迎え入れられて、伴侶として重要な位置を占めるようになってきました。愛玩動物は、高齢者にとっては共に老いていく仲間であり、子供にとっては社会性を育むトレーナーでもあります。
人は愛玩動物の健康を守る立場ですが、逆に愛玩動物は人の健康づくりや生活の質(QOL)の向上に貢献している事が知られています。愛玩動物といると笑顔や会話が増える、心が安まるなど、人と愛玩動物の関わりによる「癒し」効果があると言われています。人は、犬や猫をなでる事で心拍数や血圧が安定します。このように愛玩動物は、医療や福祉・教育など様々な分野で広く活用されています。その一方で、犬や猫への虐待や、過剰に飼育頭数が増えたため遺棄や殺処分といった悲しい出来事も散見しています。
ストレス社会の中でますます大事になってきた愛玩動物との関係をより良く保つために、愛玩動物の重要性を伝えるとともに、飼い主に適正飼育や健康管理法、特に犬においては狂犬病ワクチン接収などを伝えていきます。

5 健康づくり

家族や愛玩動物、環境とのつながりを大切に

健康は万人の願いであります。しかし全ての健康診断のデーターが正常値に入っている方は、おそらく少数でしょう。むしろ、何らかの病気を患っているとしても、より良き家族、隣人、愛玩動物に囲まれ、それぞれの役割を努めて、また趣味や生きがいを保つことにより醸成される「病気があっても、毎日それなりに元気でがんばっている」という健康感覚が大切です。
これからの健康づくりは、家族や愛玩動物、環境とのつながりを大切にしていく必要があります。私たち人間は人間だけでいきているのではなく、健全な環境の中で、様々な動植物との関係の中で生きて、健康を維持しています。これこそがワンヘルスです。

6 環境と人と動物のより良き関係づくり

健康を支える「安全・安心」な食と「食育」の推進が不可欠

環境と人と動物との間には、様々な微生物が行き来して強い結びつきがあります。これらの微生物の中には、私たちの体や健康にとって有益な乳酸菌などのいわゆる「善玉菌」と呼ばれる微生物もいます。善玉菌の存在無しには人や動物は健康に生きていけません。そして善玉菌は、食により私たちの体内に入ってきます。食の生産には、例えばお米や野菜は、農地(大地)、太陽、水が必要です。健康のためには、食は生産する環境が有害物質に汚染されない事が重要です。
また、肉や卵、牛乳などの畜産物は、動物(家畜)の「いのち」をいただいています。つまり家畜の「いのち」が健やかであることが私たちの健康にも直結しています。一方、食の生産には、農家を始め多くの方々が関わっています。このことから、継続的に「安全・安心」な食をいただくには、農産物の安全性を確認できる地元での生産と、これを支える様々な生業(なりわい)や職業の持続が大事です。そして、消費者は、何を食べる?何を食べてはいけないのか?を学ぶ必要があります。まさに学校や社会における食育です。
環境と人と動物のより良き関係が安全な食づくりを支え、私たちの健康と直結しています。

ワンヘルスの視点から大切なこと

  • ・環境中への有害物質の廃棄防止
  • ・家畜の健康のために家畜伝染病の予防や、安全な飼料の給与
  • ・薬剤耐性菌を増やさないために適正な抗菌性薬剤使用
  • ・地域の農林水産業の継続・育成や地産地消、食育の推進